「父系血統を重んじる韓国では、子どもは父親の姓を受け継ぐことを定める家族制度(戸主制)があり、婚外子で母親の姓を持つ子どもは母親から引き離されて実父の姓に変えられ、実母を知らずに育つケースも少なくなかった。それが“出生の秘密”につながった」

 だが、05年に戸主制が廃止に。女手ひとつで育てることが後ろめたい時代ではなくなった。離婚率も高まり、韓国のシングルマザーは95年から15年間で1.5倍に増加(韓国統計庁調べ)。

「ミセスコップ」(15年)のヒロインはソウル地方警察庁強行犯係のチーム長というバリキャリのシングルマザー。仕事と育児のはざまで悩みながらもタフに生きる主人公が好評で、続編も作られた。

 また、財閥の描き方にも変化の兆しが表れる。

「リメンバー~記憶の彼方へ~」(15年)と「女を泣かせて」(15年)は、それぞれ、父の冤罪を晴らそうとする弁護士と、息子を亡くしても前向きに生きようとする母親の物語。いずれも正義を背負う主人公を翻弄させる悪役として登場するのは、財閥の存在だ。

 財閥の御曹司といえば、シンデレラストーリーの王子様的キャラだったはず。批判の対象となった背景について、KBSドラマ局チーフプロデューサーのペ・ギョンスさんは話す。

「14年に起きた大韓航空のナッツ・リターン事件で財閥に対する非難が噴出。経済格差の広がりにも不満を持つ庶民は、ドラマに代理満足を感じている」

 さらに韓国ドラマ界に大きな影響を与えているのが、中国だ。

 韓国コンテンツ振興院海外事業振興団団長のキム・ヨンドクさんによると「『星から来たあなた』(13年)が中国でネット配信され、大ヒット。以来中国企業の韓国ドラマ爆買いブームが起きている」。

 韓国放送コンテンツの輸出額は、14年に中国向けが日本向けを凌駕した(韓国コンテンツ振興院調べ)。そんな中、中国政府は15年に外国ドラマのネット配信に対する規制を発表。事前審議を強化し、配信には政府の許可が必要となった。これに対抗し、韓国の制作会社は中国企業から投資を受けて、韓国と中国で同時に放送・配信する方策に出た。審議を通すために放送前に最終話までをすべて撮り終えることが前提だ。

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