東日本大震災による未曽有の原発事故が起きてから5年が過ぎた。いまだにほとんどの周辺住民が元の家に帰れない。その怒りと悲しみを胸に刻んで、黙々と働く東京電力の社員たち。賠償、除染、清掃活動……。彼らはどんな思いで、汗を流し続けているのか。
ふるさとを襲ったあの事故から5年。福島県南相馬市小高(おだか)地区で暮らす主婦3人が、小さな集会を開いた。「小高の復興に向けて何をしていけばいいのか」を考えるフリートーキング。そこに、東京電力福島復興本社の代表、石崎芳行(62)の姿もあった。
「東電憎しはあったけれど、私たちも結果として原発を容認してきた責任もある。これからは復興に向けて一緒に向き合っていきたい」
「福島第一原発の敷地内は汚染水タンクで埋め尽くされている。この現実を多くの人に伝え、これからどうするかをみんなで共有していかないといけない」
3人からはさまざまな意見が出た。石崎は、すべてをじっと聞きながら、こう静かに答えた。
「事故を起こした我々が、どういうことをしていけばいいのか、一生懸命考えています」
石崎が1977年、東電に入社したのは、「電気を作って送り届けることで世の中をよくしたい」という思いからだった。2007年からの3年間は、福島第二原子力発電所の所長として、地元の人や見学者にこう言い切っていた。
「原発は絶対に安全です。事故は起きません」
自身も信じ込んでいたからだったが、全てウソだった。