薬の値段はどうやって決まる?(※イメージ)
薬の値段はどうやって決まる?(※イメージ)
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 命が助かるなら、痛みがなくなるなら……薬の値段の高い安いは、人それぞれ。とはいえ、1カ月使えば数百万円というものも現れて……。

「そんなに国のお金を使って治療してもらうのは申し訳ない。その薬を使わないで結構です」

 東京都内の病院で肺がん治療を受けていた70代の男性は、新薬「オプジーボ」の使用を勧めた主治医にこう伝えた。

 がんが縮小する可能性があるというが、月の薬代は290万円。とはいえ、高額療養費制度で所得に応じた自己負担は外来で最高約4万円で済むので、払えない額ではなかったが、年金生活の身には余ると思えた。

 バイオ技術など製造法が高度になるにつれ、薬の値段は上昇の一途だ。最近増えているのが、病気の発症に関わる特定の分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」。また、免疫系に働きかける薬は「抗体医薬」と呼ばれ、オプジーボはその一種だ。2014年に皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の新薬として、世界に先駆けて日本で承認された注射薬だ。

 昨年12月、適応に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」が追加されたことで脚光を浴びた。72万9849円する1瓶(100ミリグラム)を2週間に2瓶使うため、年間では3500万円に達する。肺がんへの適応で見込まれる患者数、年2万7千人にもし単純にかけ算すると、国全体でかかる薬代は年9450億円。国の医療保険財政を傾かせかねない。

 ところで、薬の値段はどうやって決まるのか。日本では、薬価を含む公的医療費はすべて公定価格。薬はヒトでの臨床試験(治験)で効き目が確認され、厚生労働省の製造販売承認が得られると、メーカーが申請した薬価を元に厚労省が原案を作る。

 その原案を審査するのが、医学や薬学などの専門家からなる「薬価算定組織」だ。ここでの算定案をメーカーが受け入れれば、中央社会保険医療協議会(中医協)で了承された後、官報で告示される。不服とした場合、算定組織で再検討して最終算定案をまとめ、中医協、官報の流れで進められる。

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