「初めて見た時は何か既視感のようなものを抱きましたが、よく考えてみるとこういうのは初めてで、これは便利かもしれないな、という印象でした」

 同時に、これを利用するのは自分などよりももっと映画を見ている愛好家なのだろうと思い、手に取った物を棚に戻した記憶があるという。

「しかし13年から再び都内の名画座に通うようになって、少しずつ『かんぺ』のありがたさがわかりました。かつて名画座に通っていた1980年代前半とは状況がすっかり変わっているんですね」

 情報誌をチェックしながら映画館に通う時代は遠い昔になった。今はスマホで検索して座席予約から支払いまで簡単にこなせる。しかし、その日その時間に、どこでどんな映画をやっているか、これは間に合わないがあっちは見られるんじゃないか。楽しくもせわしない映画探しのためには、どんなデジタルメディアよりもパッと「かんぺ」を開くのが一番速い。

AERA  2016年2月22日号より抜粋

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