とはいえ、ここにきていきなり政治の風景ががらりと変わったわけでもない。郵政民営化を断行した小泉純一郎元首相、バラ色のマニフェストを掲げて自民党から政権をもぎ取った民主党、大阪都構想の実現に執念を燃やした橋下徹・前大阪市長……。時に激しい言葉で自らの主張に反対する勢力を攻撃し、対立をあおる。多少手荒な手段を使ってでも、選挙での勝利をテコに実現を目指す。そんな傾向が強まっているように見える。

 少数意見や迷いを振り払い、効率的にスピーディーにものごとを決断する。まるで、1円でも多くの利益を追求する「株式会社」の論理が、日本全体を埋め尽くし始めているようだ。

 言うまでもなく多数決は民主主義の基本原理だ。他方、多数派が少数意見を丁寧にくみとり、より多くの人が納得できる結論にまとめていくことも大切だ、という考え方も広く認められてきたのではなかったか。

「特に会社がまだ小さな時期は、経営者の決断のスピードはとても重要です。私も自らの責任において何度も重要な決断を下してきました。モーターボートの運転と同じで、経営者が右へ左へさっと舵を切らなければ、会社は波にのまれて沈んでしまう。でも、政治は違います。大きなタンカーは船長一人で動かせるわけではありません」

 タリーズコーヒージャパンの創業者で、今はミニ政党「日本を元気にする会」代表の松田公太参院議員はそう語る。

AERA 2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋

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