米国の金融資本主義の象徴であるウォール街で働く人が夕方集まるレストラン街。華やかに見えるが、激務の犠牲になる人の数は知られていない(撮影/津山恵子)
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米国の金融資本主義の象徴であるウォール街で働く人が夕方集まるレストラン街。華やかに見えるが、激務の犠牲になる人の数は知られていない(撮影/津山恵子)
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 米国のウォール街で、金融パーソンやインターン学生の自殺が問題になっている。過度な競争にさらされ、心が折れてしまうケースが多いようだ。

 2013年夏にロンドンのバンクオブアメリカ・メリルリンチでインターンをしていたドイツ人学生モーリツ・エルハルトさん(当時21)が、72時間連続勤務した後、宿舎のシャワー室で死亡しているのが見つかった。

 米国で経済が拡大する一方で、世界中の大卒の就職が容易ではない現在、将来と高給を約束される金融機関は、就職先として人気の頂点にある。エルハルトさんは、7週間のインターンが終わる直前、内定を得ようと寝ないで働き、悲劇は起きた。未明に宿舎に戻り、シャワーを浴び、着替えをして職場にとんぼ返りの生活。時には宿舎の前に帰宅に利用したタクシーを待たせたままということもあった。

 米国では経済拡大の裏で、激務が引き金となり精神的に病む人たちが増えていることが問題になっている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、競争が激しく、仕事のプレッシャーも大きい金融パーソンの自殺が増えているという。調査によると、自殺率は全米平均の1.5倍にもなる。

 同紙は今年、ゴールドマン・サックスのサンフランシスコ支店で、入社1年目のアナリストが、自宅ビルから落下し死亡したと報じた。インドにいる父親に、「2日間寝ていないのに、明日朝までにプレゼン資料を作らなければならない。あんまりだ」と電話をかけた直後だった。

 ウォール街では、休暇もなかか取らせてもらえない。「ジュニア」と呼ばれる若い金融パーソンは、一般的に休日は月に4日が限度。日曜日には出勤しなければならないため、「家族を旅行に連れていきたい」という願いもかなわない。

 前出のエルハルトさんの死亡後、ゴールドマン・サックスをはじめ、各金融大手が「土曜日だけは休むように」というルールを設けた。しかし、週休2日にはほど遠い滅私奉公状態だ。

AERA  2015年7月6日号より抜粋