セカンドオピニオンについて考えることは、たとえ受けなかったとしても自分の病気を理解し、主治医との関係を深める機会になる(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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セカンドオピニオンについて考えることは、たとえ受けなかったとしても自分の病気を理解し、主治医との関係を深める機会になる(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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 治療方針を決めるに当たって参考になる、セカンドオピニオン。しかし、そのことに気まずさを覚えるという患者さんもいる。

 昨年1月、都内在住の藤岡千恵さん(仮名・30)は、硬いものを噛んだあとに上の前歯がぐらつくようになった。すぐに5年前から家族でかかっている近所の歯科医院を受診したところ、院長の男性歯科医師から「歯の根っこが縦に折れている。抜くしかない」と告げられた。

 レントゲン写真を見せてもらうと確かに折れていたが、抜歯となるとさすがにショックが大きい。「少し時間がほしい」と頼むと、主治医は快く了承してくれた。

 抜歯までの1週間、藤岡さんは主治医に内緒で五つの歯科医院を回った。「歯が残せるならと必死でした」と藤岡さん。4院は主治医と同じ見立てだったが、最後の医院で「何とか残せるかもしれない」と言われ、転院を決意した。

 新しい主治医のもとで根の治療をして1年、歯はいい状態とは言えず、たびたび炎症を起こす。近いうちに抜歯になる覚悟はできているが、藤岡さんにとってそれ以上に残念なのは元の主治医と切れてしまったことだ。

「予約のキャンセルを入れただけで転院は伝えていませんが、気づいているでしょう」 

 戻りたいが、気まずくて、とても言い出せない。元の主治医を気に入っていた幼稚園の娘まで転院せざるを得なくなり、途方に暮れている。

 日本臨床歯周病学会・副理事長の二階堂雅彦さんが都内で開業する歯科医院には、他院に通院している患者がセカンドオピニオンで来る場合が少なくない。最も多い相談は、抜歯にかかわること。藤岡さんのような「抜かなければダメなのか、何とか残せないか」というケースだ。

 ただこの医院では、厳密な意味でのセカンドオピニオンとは異なり、ほぼ全員が初診患者として受診してくる。診察で話を聞いて、他院を離れて意見を聞きに来たことがわかるという。

「診療情報の資料は持ってこないので、おそらく主治医には内緒で来ているのでしょう。その後、来なくなると、主治医のところに戻ったんだなと。そのままうちに転院する人もいます。患者さんにとって主治医とは別の歯科医師の意見を聞くのは大事なこと。こっそり他院を受診するのもやむを得ないところはあります」

AERA  2015年3月23日号より抜粋