無残な姿をさらす東京電力福島第1原発。リスクを意図的に軽んじてきた科学者の信頼も、崩れてしまった/2012年5月26日、福島県大熊町(撮影/上田潤) (c)朝日新聞社 @@写禁
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無残な姿をさらす東京電力福島第1原発。リスクを意図的に軽んじてきた科学者の信頼も、崩れてしまった/2012年5月26日、福島県大熊町(撮影/上田潤) (c)朝日新聞社 @@写禁
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 日本中の人々の生活を変えた福島原発事故。大きな問題となっているのが、事故が福島県の住民に放射線被曝による健康被害を引き起こしているのか、ということだ。今でも専門家の間では意見が分かれている。

 福島県は2月12日、事故当時18歳以下の約38万5千人の甲状腺を調べ最新データを発表した。昨年末までに118人が、がんやその疑いがあると診断されたという。

 注目を集めたのは、今年度から2巡目に入った検査で結果が判明した約7万5千人分のデータだった。うち8人が、がんやその疑いがあると診断された。8人のうち5人は、1巡目の検査では、しこりも何もないと診断されていた。

 検討委員会の星北斗座長(県医師会常任理事)はこう述べた。

「(2巡目で)見つかった患者の年齢分布が、1巡目と同じような形になっている。まだ判断に十分な数はそろっておらず原発事故との関連がないとは言えないが、影響は考えにくい」

 一方、津田敏秀・岡山大学教授(疫学)の反応は違う。

「事故による被曝の影響は明らか。現実に対応した対策を急ぐべきだ」

 1巡目で患者が多く見つかったのは、「これまで詳しく検査したことがないから、検査するだけで見つかるため」(スクリーニング効果)と主張する専門家がいた。しかし、今回は1巡目で患者を拾い上げた後の発生であり、スクリーニング効果では説明できない。

 津田教授によれば、2巡目までの3年間に約7万5千人から8人という発生率は、全国平均の100万人のうち3人(年間)と比較すれば、統計的に有意に多発しているのは明らかだという。

AERA 2015年3月9日号より抜粋