アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はコカ・コーラの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■コカ・コーラ 東京研究開発センター 製品開発 プロジェクトマネジャー 足立秀哉(41)
急須を使って茶を入れた時、抽出した成分の粒子が茶の中に漂い、トロッとした飲み口になる。この「にごり」こそ、緑茶本来のうまみなのだが、ペットボトル入り清涼飲料ににごりを入れるのは、見栄えの悪さからタブーとされてきた。そのタブーに挑戦し、「綾鷹」を生み出したのが足立秀哉だ。
「まだ誰も作ったことのない商品でしたので、緑茶市場に旋風を起こしたい、革命を起こして業界のリーダーになりたい、という思いがありました」
物静かな外見とは裏腹に、語り口が熱い。
神戸大学大学院で生物機能化学を専攻。化学メーカーに就職し、乳化剤などを作っていたが、「最終製品を作りたい」という思いが強くなり、2005年にコカ・コーラ東京研究開発センターに転職。7年前から、ペットボトル茶の開発に熱中している。
通常、お茶の製品化まで、開発を始めて半年から約1年かかるが、綾鷹は2年近くを要した。うまみ、渋み、甘み……。バランスの異なる様々なにごりのバリエーションの試作品を、最終的には100種類以上開発。にごりのもととなる抹茶成分は、生産ラインの機械に目詰まりを起こすこともある。足立は生産工場に何度も通い、フィルターが不純物を通さず抹茶だけが通るか、徹夜で抹茶をふるい続けたこともある。
「最大の課題は抹茶の管理でした」
その言葉通り、全国にあるどの工場の生産ラインでも、品質が均一な製品を作るため、プロジェクトメンバー全員が、工場に通い、交代で仮眠をとりながら製造に立ち会った。さらに、創業450年を誇る京都・宇治の老舗茶問屋「上林春松本店」とも提携し、07年、ついに綾鷹を発売。広くファンを獲得し、「にごり市場」で先行する。
「ひと仕事終えたので、落ち着きますね」
そう言って足立は、丹精込めた綾鷹で一服するのだった。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・野村昌二)
※AERA 2014年10月20日号