女性閣僚2人のあっけない辞任。案の定、「だから女は」の声が聞こえてきた。SMバーに政治活動費を使っても、「だから男は」とは言われないのに。
シャツの上からたっぷりとしたビール腹をなでながら、男性公務員(50)は言った。
「『なんかやられそうだなあ』と思っていたんですよ。若い女性が大臣になるとねぇ。出る杭は打たれるっていうか」
小渕優子前経済産業相のことだ。自身の職場も、旧態依然とした男社会だからわかる。
「ジジイ連中にいじめられるだろうなって」
ネット上には案の定、「だから女はだめなんだ」という言葉が飛び交い、「『女性が権力を持つと国が乱れる』というのが古今東西を問わず歴史の教訓だ」などとコメントする人まで現れる始末。日本は厳然たる「男社会」なのだと、思い知らされた。
大手流通企業に営業課長として勤務する女性(40)にとっては、そんなことはわかりきっていた。
入社以来、負けたくない一心で「オヤジ化」し、男性社会に適応してきた。気づけば婚期を逃し、それでも課長に抜擢されたときは跳び上がりたいくらいうれしかった。それなのに──。
「女はいらない、男に代えろ」
何度、陰で言われたかわからない。7人いる部下のうち、年上の部下がとりわけ露骨に反抗してくる。噂では、人事部に直接、「女課長は使えない。男に代えてほしい」と交渉していると聞いた。彼は私の失敗を待っている、と感じていた。
「だから、絶対に失敗なんかできません。ミスをしたら最後、そら見たことか、と言われるに決まっていますから」
女性リーダーを支援するNPO法人GEWEL(ジュエル)(東京都港区)の川合昭子代表理事は言う。
「ダイバーシティーにおいては、3割に達していないとマイノリティー。今回の小渕さんの問題が、『女は』と女性全体の問題に広げられるのは、政治家に女性が少ないから。男性閣僚が不祥事で辞めても、『男だから』とは言われませんよね」
小渕氏の後任の宮沢洋一経産相は「SMバー」に政治活動費を支出したことが明らかになったが、「だから男は」とは言われなかった。
※AERA 2014年11月3日号より抜粋