リアルに会わなくても、個人個人がつながることができてしまうSNS時代。便利なはずのツールが、離婚後の親子関係を複雑化させている。
1年前に離婚して娘を1人で育てる、教員の女性(37)は最近、別れた夫と娘の付き合わせ方で悩んでいる。特に2人のメールのやり取りだ。
夜8時過ぎ、小学1年の長女が寝静まったかを見に、子ども部屋に行くと、まだ寝つけずにいた娘にこう言われた。
「パパ、返事をくれないの」
目に涙をたくさんためた娘の小さな手には、スマホがぎゅっと握り締められていた。
元夫と娘がメールのやり取りをしているのは知っていたが、元夫から娘への返信が滞っているのをこの日、初めて知った。新しくできた彼女のせいなのかもしれない。怒りがこみ上げた。小さな娘はまだパパを求めている。元夫と以前のように一緒に暮らしてほしいと、娘から懇願されることもある。母としてどう対応したらいいのか、迷っているという。
離婚の原因がDVの場合は、さらに深刻だ。DVの被害者・加害者支援を行う「アウェア」のファシリテーター・吉祥眞佐緒さんはこう話す。
「特に中高生くらいの子どもの場合、子どもは友達とのつながりをなくしたくないため、DVの父親から逃れて別々に暮らすようになった後も、以前から持っていた携帯の番号を変えないことがほとんどです」
そうした気持ちを利用して、別れた父親がフェイスブックやツイッターで子どもを検索し、友達申請してくる。子どものほうは、断ると何をされるかわからないので拒否できない。そうして、父親が子どもの行動を逐一観察し始めることもあるという。
こんな例もあった。子どもがどこかに遊びに行ったと投稿すると、「そんな遊ばせる金があるなら養育費を減額する」と、子どもと同居する母親を脅してきたのだ。
「両親の間に立たされることは子どもにとってストレスになりますし、なにより自分のプライベートに踏み込んでこられることで子どもは恐怖を感じます。SNSを介したDV親子の関係は、法などで規制することができず、子どもにとって難しい現状があります」(吉祥さん)
※AERA 2014年9月29日号より抜粋