働く時間を変える深夜残業を誇る仕事人間→朝型に変え生産性6倍永井孝尚さん(52)日本IBM時代に朝型にシフトし、仕事の効率アップ。昨年独立。今年9月に新刊『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』を出版する(撮影/写真部・植田真紗美)
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働く時間を変える
深夜残業を誇る仕事人間→朝型に変え生産性6倍
永井孝尚さん(52)

日本IBM時代に朝型にシフトし、仕事の効率アップ。昨年独立。今年9月に新刊『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』を出版する(撮影/写真部・植田真紗美)
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 毎日の生活時間は決まっている人がほとんど。でもその時間を少しずらしてみるだけで、新らしい発見ができることもある。永井孝尚(たかひさ)さん(52)は、残業三昧の生活から朝型に切り替えて、新たな人生を切り開いた。

 1984年春、慶應義塾大学工学部を卒業し、日本IBMに入社した。当時はIT業界が毎年二桁成長をしていた時代で、20代の頃は、連日深夜まで残業し、忙しい時期には週2、3日は会社近くのホテルに泊まった。土日もどちらかは出勤。同僚や友人に残業自慢をしていた。ひと月の残業時間が200時間を超えたこともあった。40代半ばまでは平日は家に寝に帰るだけの毎日だった。

 そんな生活を変えたきっかけは、朝のラッシュ時に通勤電車が2日連続でストップしたこと。運転再開した電車は殺人的な混雑で、乗る気も失せた。2日とも仕事が進まなかった。

 翌朝、妻の勧めで勤務時間を早めてみることに。試しに始発に乗ると、通勤ラッシュから解放され、誰もいないオフィスは、思いのほか仕事がはかどった。前日にインプットした情報を頭の中で一晩寝かせたことで潜在意識が情報を整理してくれて、アイデアがわいてくるのだ。

「朝は邪魔が入らず集中できる上、アイデアが生まれやすい。夜に眠さと戦って3時間かかっていた仕事が、朝は30分で片付く。朝の生産性は夜の6倍です」

 以降、午前5時半に起床し、7時に出社。始業前に2時間集中して仕事する生活が始まった。午後5時すぎに帰社するとなると、まだ働いている同僚の目が気になったが、早く出社していることをアピール。自宅でも会社のネットワークにつなげる環境を整え、同僚には「早く帰りますが、何かあれば連絡ください」と伝えた。

 仕事が詰まっていない日は、朝の時間を会社近くのカフェに入り、ブログや本の執筆にあてる。内容はマーケティングについて。社内に数人しかいない認定プロフェッショナルとして、経験と知識を世の中に伝えたいと思い、2008年には自費出版本も完成。その本を足がかりに商業出版も実現し、11年に発売した『100円のコーラを1000円で売る方法』がシリーズ累計50万部のベストセラーになった。

 生活を2時間早める。そんな小さな変化が、仕事の質を上げるばかりか、社外にも活躍の場を広げてくれた。永井さんは昨夏独立し、講演や研修に力を入れている。

AERA 2014年9月8日号より抜粋