理研が設けた第三者による改革委員会の提言に応え、理研の野依良治理事長(中央)らがアクション・プランを発表した (c)朝日新聞社 @@写禁
理研が設けた第三者による改革委員会の提言に応え、理研の野依良治理事長(中央)らがアクション・プランを発表した (c)朝日新聞社 @@写禁
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 STAP細胞は結局あったのか、なかったのか。誰もが問いたい疑問は、またしても先送りされた。検証の道のりは遠く厳しい。

「何がわかりましたか」
「C57BL/6の脾臓(ひぞう)での塩酸処理ではできないということ」

 その答えで、厳しい雰囲気だった会見場が笑いに包まれた。

 理化学研究所(理研)発生・再生科学総合研究センター(CDB)の丹羽仁史プロジェクトリーダーは専門用語や写真を使って延々と検証実験の説明をしたが、簡潔にまとめてしまえば、その一言につきる。C57BL/6というのは実験マウスの遺伝系統タイプをさす。そのマウスの脾臓の細胞を、薄めた塩酸に浸して作ってもできなかった。つまり論文に記述された方法で、STAP細胞はできなかったということだ。

 8月27日、理研は「研究不正再発防止をはじめとする高い規範の再生のためのアクションプラン」を発表。同時に「STAP現象の検証実験」の中間報告をした。

 STAP細胞論文に疑惑が出てから半年あまり。論文作成過程で何があったのか。そもそもSTAP細胞は存在していたのか。根本的な問題の答えは出ていない。それどころか、本格的な調査はこれから始まるという。理研の対応が科学界の常識からずれていて、多くの研究者は疑問に思い、世間も納得しない。

 検証実験は、普通は、再現性や捏造を疑われた研究者自身が、疑いを晴らし、論文撤回を避けるために行うものだ。STAP細胞論文2本は、図の改ざんなど複数の不備が見つかり、すでに撤回されている。撤回すれば、その論文中で主張した内容はなかったことになる。通常、検証実験はしない。再現性がない論文は忘れられていくだけだ。そんな例は多数ある。

「検証実験を個人の研究としてではなく、理研CDBとしてやっていることに疑義が生じていることは重々承知している」

 検証実験の総括責任者、相沢慎一・CDB特別顧問は会見でこう述べた。それでも、科学界の手続きとは独立に、「国民=一般社会への説明責任を果たすため」、4月から検証実験を続けている。

 STAP現象に疑いの目を向ける研究者が多い中、ある幹細胞の専門家は「可能性はある」と話す。胚性幹細胞(ES細胞)など万能細胞の作製や維持には、微妙なノウハウが必要で、実験開始後すぐにできないことも多いという。

AERA 2014年9月8日号より抜粋