家事や育児をまったくしない「ゼロメン」。その性質は、家庭環境で連鎖することがあるのかもしれない。ある女性の例を紹介する。
結婚したころは、相手が「スーパーマザコン」だとは思ってもいなかった。千葉県に住む会社員の女性Aさん(38)が、小学2年の息子を連れて家を出たのは3年前。夫の家庭内暴力(DV)が原因だった。そこには育った家庭環境が影響しているような気がしてならない。
夫とは職場で知り合った。決断力と行動力にひかれ、半年で結婚を決めた。義母は専業主婦。夫は結婚するまで実家で暮らし、何から何まで義母に頼りきり。義母は、朝は毎日、部屋の窓のカーテンを開けて夫を起こし、出勤する際は自転車のカギを開けて準備し、見送っていたらしい。どんなわがままを言われても、義母は「嫌じゃないのよ」と嬉しそうだった。
結婚しても、やってもらって当然、という夫の意識は変わらなかった。家事や育児をまったくしない「ゼロメン」であるばかりか、Aさんのことを「従業員」「奴隷」呼ばわり。暴力もふるった。そんな夫との別居は、DVから逃れるためでもあったが、何より息子への“連鎖”を心配してのことだった。Aさんは言う。
「義父も義母に暴力をふるっていた。彼の考え方は、父からの“遺伝”と、それを許してしまう家庭環境によるものだと感じました。いま思えば、私自身も結婚当初は仕事も家事も育児もきちんとこなして、妻として、母として、型にはまるように頑張っていた。それも、夫が豹変した一つの要因かもしれません」
夫から謝罪の言葉はなかったが、別居後に義母から手紙が届いた。その中には「いろいろと責任を感じている」と書かれていた。Aさんは複雑だった。
「謝罪まで親にさせてしまうんですからね」
※AERA 2014年9月1日号より抜粋