「宇宙博2014=NASA・JAXAの挑戦」幕張メッセ(千葉市)で9月23日まで開かれ、さまざまな宇宙体験ができる(撮影/横関一浩)
「宇宙博2014=NASA・JAXAの挑戦」幕張メッセ(千葉市)で9月23日まで開かれ、さまざまな宇宙体験ができる(撮影/横関一浩)
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1972年、アポロ17号が太平洋上に着水した時に使われたパラシュート。下はアポロ司令船の訓練シミュレーターのレプリカ(宇宙博2014の展示品)(撮影/横関一浩)
1972年、アポロ17号が太平洋上に着水した時に使われたパラシュート。下はアポロ司令船の訓練シミュレーターのレプリカ(宇宙博2014の展示品)(撮影/横関一浩)

 人類が宇宙に飛び出してから50年余り。中国が昨年、探査機の月面着陸に成功。米国では、中国に対抗するかのように、「アポロ遺産」の国立公園化計画が動き始めた。

 米議会で昨年7月、アポロ着陸地点を米国の「国立歴史公園」に指定する法案が提出された。

 1960年代から70年代にかけてのアポロ計画では、11号から17号まで(13号を除く)計6回、探査機と宇宙飛行士が月面に降り立った。観測に使った機器や4輪走行のローバー(探査車)、米国旗、人間の足跡まで、多くの物を月面に残した。空気のない月では風も吹かない。月面に立てた米国の国旗は今もそのままで立っていることが、はるか上空から撮影した画像で確認されている。足跡もそのまま残っている可能性が高い。

 国立公園化法案では、こうした人工物を米国の「遺産」とみなし、着陸地点一帯を「国立歴史公園」に指定する。指定後はユネスコの世界遺産にも登録するというから驚きだ。

 この法案に対しては、月を含む宇宙空間を「自由に立ち入ることができる」「国家による取得の対象とはならない」と定めた国連の宇宙条約に違反するとの意見が根強い。しかし、法案提出者となった下院宇宙科学技術委員会のドナ・エドワーズ議員は「外国や企業による月探査が技術的に可能となり、かけがえのない遺産が危機にさらされている」と訴える。法案成立の見通しは今のところないが、米国の危機感の表れといえそうだ。

 法案に先立つ2012年5月には米航空宇宙局(NASA)がアポロ着陸地点を立ち入り禁止にする初指針を公表した。たとえばアポロ11号では、着陸地点の半径75メートル以内と、半径2キロの上空への立ち入りを禁じる。

 念頭にあるのは米非営利団体「X賞財団」が実施する民間による月探査レースだ。グーグル社がスポンサーとなり、15年末までに最初に月面で無人探査車を500メートル以上走らせ、画像を送ってきたチームに優勝賞金2千万ドルが贈られる。アポロ計画が残した遺物を撮影した場合の特別賞もある。

 日本を含めた世界18チームが参加意思を表明。まだ探査機打ち上げのメドをつけたチームはなく、スケジュールは遅れ気味だが、主催者とNASAは指針を守ることで合意した。

AERA 2014年8月18日号より抜粋

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