
ドイツの優勝に終わったサッカーW杯。日本代表と同じグループだったギリシャチームにソクラティスという名前の選手がいるのを見て、イギリスの伝説的コメディー集団、モンティ・パイソンのコント「哲学者サッカー」を思い出したのは私だけではないはずだ。
「アルキメデスのクロスをソクラテスがゴール!ヘーゲルは実在には質を賦与できないと主張!カントは演繹法で観念論を展開!マルクスはオフサイドを主張!」
1969年から74年にかけてイギリスの公共放送・BBCで放送された「空飛ぶモンティ・パイソン」でコメディー界に革命を起こしたモンティ・パイソンが7月、ロンドンで約30年ぶりの再結成公演を行った。
6人のメンバーのうち、3人がケンブリッジ、2人がオックスフォード出身(残り1人はアメリカ人)。インテリジェンスと批評精神、そして破壊的なバカバカしさが身上の彼らが、病没したグレアム・チャップマンを除き全員結集。会場にはコントのコスプレをしたロンドンっ子がつめかけ、「死んだオウム」「スペイン宗教裁判」など往年の名作に拍手喝采した。
ロンドン在住のライター、情報通信コンサルタントの谷本真由美(@May_Roma)さん(39)は今回の公演をテレビで鑑賞した。谷本さんはモンティ・パイソンを生んだイギリスのお笑いの神髄は「自虐芸」「知性主義」「権威への挑戦」の三つに集約される、と言う。
「イギリス人の『自分を笑う』センスは、普段の会話やメディアにもあふれています。自分の失敗やダメな点を面白おかしくネタにすることができる人は『あいつは面白い』と評価される一方、『俺ってこんなにすごい』と自慢する人は『あいつってダサいね』と言われます。権威や既成概念を常に疑ってかかる姿勢は、物事を斜めから見たり、何事にも延々と文句を言うというイギリス人のあまのじゃくな資質を反映したものです」
※AERA 2014年8月4日号より抜粋