つき合い残業などの旧態依然とした職場文化はなくなりつつある。ただ、仕事量が膨大すぎて残業なしでは終わらないと嘆く声は多かった(撮影/高井正彦)
つき合い残業などの旧態依然とした職場文化はなくなりつつある。ただ、仕事量が膨大すぎて残業なしでは終わらないと嘆く声は多かった(撮影/高井正彦)
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 バリバリ働く「バリキャリ」、自分の生活に合わせてユルく働く「ユルキャリ」……。一口にワーキングマザーといっても様々なタイプがいる。

 企業でダイバーシティーに関するコンサルティングをする、NPO法人「GEWEL」の理事、本井稚恵さんは、各企業が女性社員を対象にしたセミナーを開き、先駆的バリキャリ層のワーママを登壇させて苦労話を紹介するシーンをよく見てきた。聴衆である多くの社員の感想は、決まってこうだ。

「あそこまではできない」

 本井さんはこのようなアプローチは間違っているという。

「格差を強調して絶望を生んではダメ。かつてに比べればワーキングマザーを支援する様々な制度が増えてきていることを伝え、工夫すればどうにかできるという自信やヒントを与えるほうが有効」

 だが現実は、バリキャリ層までもが疲弊し、戦線離脱する。

 2人の女の子を持つトモミさん(51)も、長く外資系企業でバリバリ働いてきた。長女の出産時は自分も夫も育休を半年ずつとり、育児分担は半々。数カ月に1度は海外出張もこなした。だが昨年、乳がんが見つかった。激務の影響かはわからないが、常にストレスにさらされていたこととは無縁ではないだろう。

 手術後、職場復帰したが、会社の経営が悪化し倒産。いまは求職中だ。家にいるようになって、どれだけ子どもたちに寂しい思いをさせてきたかを思い知った。11歳の長女に言われた。

「どんなにうちが貧乏になってもいいから、お母さん、もう働かないで」

AERA  2013年12月16日号より抜粋