腕時計型やメガネ型をした携帯端末など、今、身につけられる「ウエアラブル端末」が続々発売されている。サムスン、ソニーやそのほかベンチャー企業も乗り出しているこの分野で、気になるのはグーグルの動向だ。
発売前から注目度の高いメガネ型のグーグル・グラスは、基本操作は音声で行う。英語で「OK、グラス、ビデオ撮影」と話すと、動画撮影が始まるという具合だ。レンズの位置にある透明なディスプレーに、検索画面や地図が表示される。
もっとも、メガネ型は今までにない体験を提供してくれる一方、まだ課題も多いようだ。
米カリフォルニア州サンディエゴで10月、グーグル・グラスをかけて車を運転していた女性が、違反切符を切られた。運転者と向き合う位置に娯楽などを映す画面を設置し、操作することを禁じた州法に違反したという。ほかにも、顔を認識する機能と組み合わせ、行き交う人の個人情報を瞬時に引き出すことも原理的には可能だ。
スマホに詳しいジャーナリストの石川温氏は、実際にグラスを体験してみた結果、「安全の確保やプライバシーを守ることなどルールづくりが課題」と指摘する。
そういう課題はあっても、ウエアラブル端末がもたらす未来への期待は、大きく膨らむ。いろいろなセンサーを組み込めば、腕時計型は脈拍や血圧といった健康にかかわる情報を収集でき、メガネ型からは見ている世界が、そのまま画像情報として得られる。それらの情報をネットワークでかき集めて分析を加え、利用すれば、新しいビジネスの可能性が広がるのだ。
グーグルの元副社長、村上憲郎氏は、さらにその先まで視線を向ける。
「グラスの次に何が来るでしょう。グーグル・コンタクトレンズ? グーグル眼球だって実現するかもしれない。つまり、健常な人の身体機能を補強する、あるいは何らかの病気や障害のある人をIT機器でサポートするという医療行為にまで発展する流れが生まれつつあると思うのです。サイボーグのような技術の突破口が近づいているということではないでしょうか」
※AERA 2013年12月2日号より抜粋