五輪競技会場が集中する湾岸エリア。新築マンション分譲戸数が急増するなど、活況を呈している(撮影/写真部・外山俊樹)
五輪競技会場が集中する湾岸エリア。新築マンション分譲戸数が急増するなど、活況を呈している(撮影/写真部・外山俊樹)
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 2020年の東京五輪開催が決定したが、一方で懸念されるのが地震のリスクだ。もし大地震が起こった場合、新しい競技場の建設が予定される湾岸エリアでは、様々な被害が予想される。

湾岸エリアゆえの懸念のひとつが、液状化だ。都の想定でも競技会場に液状化の可能性を示している。豊橋技術科学大学の斉藤大樹教授(耐震工学)は指摘する。

「競技会場の湾岸エリアのような軟らかい地盤は、地震の揺れが増幅され、液状化が起こる。競技施設などの大きな構造物自体は問題ないと思うが、周辺が液状化すれば、施設からは逃げられなくなり孤立する。選手や観客らが避難できる施設としての機能も求められます」

 震源地が首都圏だけでなく遠くても安全とは言えない。東日本大震災では、震源域から約500キロ離れ、地面の揺れは震度3だった大阪市で、大阪府咲洲(さきしま)庁舎の52階は水平方向に最大で約2.7メートルも揺れた。天井が落ちるなど、360カ所が損傷した。長周期地震動の影響だ。

「建物の耐震化だけでなく、天井やスプリンクラー、エレベーター、防火扉などの設備の耐震化が見落とされがち。東日本大震災の教訓を十分に生かすべきだ」(斉藤教授)

 湾岸といえば津波はどうなのだろう。東北大学の今村文彦教授によれば、南海トラフの巨大地震が発生したとしても、東京湾の津波は2~3メートル程度だ。ただし、これまで経験したことのない「都市型被害」のおそれを心配する。「船、自動車などが大量の漂流物になりえるし、地下街の浸水は想定されていない」。地震で古い防潮堤や水門が壊れたら、ゼロメートル地帯に水が流れ込む。7年ではインフラ整備は間に合わないから、津波避難ビルの指定や競技場マップに避難経路を書くなどの「ソフト対策が重要」と指摘する。

AERA  2013年11月11日号より抜粋