就活に不可欠な人間力。これを身につけるには、親から離れて自活するのが有効らしい。
ハナマルキャリア総合研究所代表でキャリアコンサルタントの上田晶美(あけみ)さんは、学生たちに「就活を成功させたければ、自活しよう」と説く。自活には「子どもを開眼させるメリット」が三つあるからだ。
「自活している子は就活に強い。家賃を含めた生活費がどのくらいで、どの程度稼がなくてはいけないか知っているから、働く意欲が高いんです。また、日常生活で誰も助けてくれないので失敗もするが、自分の欠点を認識でき、自己管理能力がつきます。さらに、光熱費の支払いや買い物、バイトなどで、社会の成り立ちを学びます。家と大学の往復だけでは、環境的に高校に7年通うのと同じですから」
要するに、(1)お金の価値が見える(2)自分自身が見える(3)社会が見える。「企業の評価が高いのは地方出身者で、能力も意識も一番高いのは、東京に住む地方出身の女子」(上田さん)というのもうなずける。
「かわいい子は家から出して」と親に働きかけつつ、自ら実践している。大学2年の長男友(ゆう)君を大学入学と同時に自活させた。唯一のアドバイスは、
「夜のバイトは授業に行けなくなるから、昼間にしなさい」
息子からは、1浪中に、「大学生になったら一人暮らしさせてほしい」と言われた。
「これ以上親に迷惑をかけたくない、自立したいと息子に言われました。予備校の授業料を振り込みに行かせたのがよかったのかも」(上田さん)
浪人が決まったとき、50万円の札束を息子の目の前にどんと積んで見せてから、自分で振り込ませた。
「自活してお金の価値と親のありがたみが嫌というほどわかった。食事はもちろんですが、トイレットペーパーの補充などやらなきゃいけないことが本当に多い。どれだけ親に甘えていたかを実感しました」(友君)
猛暑の夏には、電気代が跳ね上がっていて驚いた。実家にいるときは使い放題だったエアコンを我慢した。財布の1万円札がなくなるのが早くて焦ったことも。
「SOSがあり3万円貸したら、『大事に使います』とメールが来た。自活させて良かったと思いました」(上田さん)
※AERA 2013年9月23日号