仲間と生き残る備蓄品(撮影/写真部・植田真紗美)
仲間と生き残る備蓄品(撮影/写真部・植田真紗美)

 東京23区内に住む20~40代のうち、既婚者や死別・離別者、無回答者を除く未婚者数は、約189万人にものぼる(2010年秋の国勢調査)。今後想定される首都直下地震の特徴のひとつは、高齢者以外にこうした大量の「おひとりさま被災者」が生まれることだろう。実はこうした若くて健康なおひとりさま被災者は、実際の災害時には、避難所に入れない可能性や、居づらくて出てしまうこともあるという。編集部では、今後想定される巨大地震で20~40代のおひとりさまが避難所に入れないと仮定したうえで、いまやっておくべきことについて考えてみた。

 一つ目は、生活圏の地震リスクの確認だ。防災科学技術研究所が運用するホームページ「地震ハザードステーション」には、住所を入れるだけで土地の特徴や標高、震度6強以上になる確率などを総合的に診断してくれる「地震ハザードカルテ」がある。自宅、会社、実家など避難する可能性のある場所のリスクを知っておこう。

 自分の住居など避難先になる可能性がある建物の建築年、石綿(アスベスト)使用、耐震診断の有無の確認もしておこう。これらは契約時に渡される書類「重要事項説明書」に記載が義務付けられている。建築基準法の想定が震度6から7に大きく改正された1981年、耐震偽装事件が発覚し、審査が厳格化した07年が目安のラインだ。

 自分の住んでいる物件が81年以前の施工で、すぐに引っ越しできない場合は、建物が壊れた場合の被害を冷静に想定しておこう。阪神・淡路大震災の写真が参考になる。阪神大震災で被災した遠藤あづささん(40)が住んでいた鉄筋3階建てのマンションは揺れで傾き、ドアが開かない状態に。体当たりしているときに隣人が気づき、開けるのを手伝ってくれたという。「万が一の避難方法は頭に入れておいて」(遠藤さん)。

 会社では、建築年や耐震補強の有無、災害後の事業継続計画(BCP)、希望すれば社内の空きスペースで避難生活を送れるのかなど、気になる点を社内の労働組合や総務関連の部署に聞いておこう。おひとりさまの中には、いざとなったら会社に行けばなんとかなると思っている人も多いだろうが、いつもは部外者が入らないオフィスも被災時はセキュリティーがダウンして不審者が忍び込みやすい環境になり、トイレや物陰で遭遇した窃盗犯に襲われることもある。東日本大震災の際には、50代の男性が襲われた例も。会社で避難生活を送る心構えなら事前にメンバーを募ってチームを組み、会社と協定を結んでおこう。

AERA 2013年9月2日号