延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
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 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、村上龍さんとピンク・フロイドについて。

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 僕にとって、村上龍さんはいろんなことを教えてくれる大切な人だ。

 20代の頃、F1やテニス4大大会などで世界中を取材されている龍さんをどこまでも追いかけ、国際電話を通してリアルタイムでその声をリスナーに届けていた。帰国されると必ず押しかけ、話を聴いた。

 1971年夏、ピンク・フロイドの初来日ライブ「箱根アフロディーテ」のことも。学生だった龍さんはチケットを持たずに箱根に向かった。大量の音響機材を積んだ大型トラックが何台も到着、そこに主催局ニッポン放送の亀渕昭信さんが通りかかり(亀渕さんは後年社長になった)、学生は入れてあげるよと関係者口から通してくれたという。

 夕方になると芦ノ湖から湧き上がった霧がステージを包み、照明が映えて何とも幻想的な雰囲気になった。そんな話に僕はうっとりした。

「ピンク・フロイドは歌舞伎やフェリーニの映画のように、構築美と様式美を極めたバンド」とは音楽プロデューサー立川直樹さんの言葉だが、高校時代に勉強のできる連中は大抵プログレッシブロックを聴きこんでいた。

 その中でもピンク・フロイドのアンニュイで気怠い曲は幾分複雑な、知的な高校生の感覚にぴったりだった。

『ウマグマ』『原子心母』、そして『狂気』……。ピンク・フロイドを聴き続け、ロジャー・ウォーターズが崩壊したベルリンの壁の前で行ったライブの生中継をロンドンで観て興奮したというラジオ局仲間もいる。

 作品売り上げ2億5千万枚以上のピンク・フロイドは現在ツアーをしていない。もうCDで聴くのみだと諦めかけていたら、長年音楽業界にいる友人がトリビュートライブに誘ってくれた。

 英リバプールのブリット・フロイドというバンドで、全世界で1000公演以上をこなし、200万人以上を動員している。レコーディングやツアーメンバーとしてピンク・フロイドと活動を共にしたミュージシャンでもある彼らは、世界のピンク・フロイドファンを虜にしているそうだ(聴けば、第一線のミュージシャンによるトリビュートライブはポピュラーで、テキサス生まれのベーシスト、ウィル・リーはビートルズトリビュートバンドを組んで世界を回っているという)。

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