次に「サッポロ」ですが、この語感が素晴らしい。例えば「やっぱり」「さっぱり」「どっぷり」「ホップステップ」「パイナップル」のように、促音(小さい「っ」)の後に「破裂音パ行」が来る言葉には、小気味良い躍動感があります。ピコ太郎さんの「ペンパイナッポーアッポーペン」なんて、まさに夢のアトラクション・ワード! そして日本語では珍しい「ポロ」という響き(由来はアイヌ語)もかなり肝です。「涙ポロポロ」や「おっぱいポロリ」に使用されるオノマトペ(擬態語)の要素がある「ポロ」は、どこか可愛らしさとノスタルジックな情緒を醸してくれます。
このように「サッポロ」が、地名としてだけでなく「響き」としても有効であることは、「サッポロビール」や「サッポロポテト」などを見ても明らかです。中でも「サッポロ一番」は、「サッポロ」と「イチバン」という二つのパワーワードが合体している最強ネーミングと言えます。これが「ハカタ一番」ではちょっと違いますし、同じ4文字地名でも「ヤマグチ一番」や「シズオカ一番」だとバッターの打順みたいになってしまう。「日暮里(ニッポリ)一番」「鳥取(トットリ)一番」も響き的には近いものの、どうも地元の町興し感が拭えない。
さらに、昔ながらのCMでもお馴染み「サッポロ一番みそラーメン」に至っては、音数が「七・五」調に当てはまるのです。冬近し/サッポロ一番/みそラーメン。『プレバト!!』の夏井いつき先生には「才能なし」と言われそうですが、語感としては立派な一句になるぐらい、日本人のリズム感にしっくりくる名調子。「サッポロ一番」には、日本人のソウルフードになるべくしてなる理由があった。あ、35年間CMキャラクターを務めた藤岡琢也さんの功績も忘れてはなりません。
※週刊朝日 2020年2月28日号