香港で下船した客が新型コロナウイルスによる肺炎と確認され、検疫のため横浜港・大黒ふ頭沖に停泊中の大型クルーズ船 (c)朝日新聞社
香港で下船した客が新型コロナウイルスによる肺炎と確認され、検疫のため横浜港・大黒ふ頭沖に停泊中の大型クルーズ船 (c)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスの感染拡大が、世界経済に深刻な影響を及ぼす懸念が強まっている。

 日本銀行の黒田東彦総裁は2月4日の衆議院予算委員会で、「中国国内の経済活動が抑制されることに加え、製造業のサプライチェーン(供給網)や、中国人観光客の減少などを通じて、日本だけでなく、世界経済全体への影響が懸念されている」と述べ、2003年に感染が広がったSARS(重症急性呼吸器症候群)の時より経済への打撃が大きくなる恐れを指摘した。

 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の藤和彦上席研究員も「新型コロナウイルスの潜伏期間は10日間と長く、軽症患者も多いため、感染者を発見するのが難しい。経済被害はSARSの時(400億ドル)の3~4倍との予測もある」と指摘する。

 さらに藤氏は「致死率(約2%)が低いことを理由に、『過剰に心配する必要はない』との声もあるが、約100年前に大流行したスペイン風邪の致死率も『2.5%以上』と意外に低かった。致死率が低いウイルスのほうが、スーパースプレッダー(一人で十数人に感染を広げる人)が出現する可能性が高く、より多くの人が感染し、パンデミック(大流行)が起きやすい」と警鐘を鳴らす。

 専門家の間では楽観論と悲観論が交錯しているが、忘れてはいけないのは、SARSが流行した03年時点と現在の中国経済の存在感の違いである。

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