(2)ドライよりウェット
フードはドライよりウェットフードを多めに。水分が多く、泌尿器系の疾患を発症するリスクが低くなるから。生ものに近いため、猫にとっての嗜好性も高い。使い切ることを前提に製造されているので基本的に保存料が使われず、飼い主の見た目のために添加される着色料もドライフードより少ない。
(3)保管は密閉容器で
ドライフードは封を切った瞬間から酸化が始まり、風味が落ちてしまう。奥田さんは数種類のフードの袋を専用の密閉容器に入れて保管している。光でも品質が変化してしまうので、ガラス製などではなく遮光性の高い容器がおすすめだ。
(4)ちょこちょこ食べ
一度にたくさんを食べると人間と同じく血糖値が急上昇し、余分な糖が脂肪として蓄積されてしまう。1日の総摂取カロリーを変えずに、できるだけ回数を分けて与えるのがいい。
「もともと猫は狩りをしてネズミや小鳥などの小動物を仕留めて食べる生き物です。少しずつ食べることは、本来の猫の食性に近いのです」(奥田さん)
日中、仕事などで不在にするときには少し多めにあげるのも仕方ないが、帰宅後や在宅時にはできるだけ「ちょこちょこ食べ」を実践するといい。
ただし、肥満に気を付けるのは中年期まで。高齢期の猫は「いかにやせさせないか」が大切だと奥田さん。
「やせてしまうと病気への抵抗力も低くなります。高齢期に入ったら好きなものを食べさせ、やせさせない、が大事です」
東京都のみゃあさん(19歳、メス)の飼い主・村松美加さん(50代)も話す。
「若いころはおやつを一切与えていませんでしたが、19歳を超えてからは、とにかく食べることを優先し、『ちゅ~る』などのおやつもあげています」
猫の幸せな老後は、安心して住める家と一緒に暮らす家族がいてこそ。飼い主の高齢化に対応するため、こんな取り組みもある。
NPO法人「東京キャットガーディアン」(東京都)が実施している「ねこのゆめ」は、飼い主が入院したり亡くなったりして飼育が困難になった場合に、ガーディアンが猫を引き取り、新しい飼い主に再譲渡・もしくは終生飼育を約束する積み立て型の事業だ。
現在、その終生飼育施設で暮らすフーくん(16歳、オス)は3兄弟の真ん中。兄は3年前に、弟は残念ながら取材日の朝に16歳で亡くなったが、フーくんは元気いっぱい。猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症(=猫エイズ)のキャリアだが、腎臓の数値が少し高い程度。施設にいる32頭の猫と常駐スタッフに見守られて暮らしている。
同施設の猫の平均年齢は12~13歳。スタッフが常駐し、キャリア猫と普通猫の時間帯を分けてケージから出し、自由にさせている。1日1回、獣医師の回診もある。代表の山本葉子さんは話す。
「最近は腎臓病の新薬や人工血液の開発も進み、『猫寿命30年』も夢ではなくなってきました。飼い主さんも高齢化するなか、最後まで幸せに猫と暮らすための方法をより真剣に考える必要があります」
人間も猫も“100歳”まで生きる時代。猫の健康長寿のために、人間ができることはまだまだありそうだ。
※週刊朝日 2019年12月13日号より抜粋