林:えっ、ほんとに? だってそれぞれ素敵な方だったし、幸せだったと思うけどなあ。
南:そうだ、真理子さんは前の人(作家の辻仁成さん)も知ってますよね。
林:知ってます。このあいだもパリに行ったとき、おうちに遊びに行きましたよ。ああいう人たちと愛し愛されたときって、幸せだったんじゃなかったですか。
南:うーん、結婚生活って続けることに意味があると思うんですよ。やっぱり2度ダメだったってことは、本当の幸せとは言わないんじゃないかと思うんです。
林:魅力的な男女だから、ここで別れてもすぐ次がまたあるだろうってお互いに思うんじゃないですか。
南:私は次があるとはまったく思ってなかったし。
林:絶対また次が来ますよ。こんなに若くてきれいなんですもん。いくらでも寄ってきますよ。
南:いや、ないです、ないです。それに本当の幸せというのは、結婚に関しての幸せじゃなくて、「私はこのために生きてきたんだ」というところまで行ってみたいんですよ。
林:私だって、全部出し切ってすごいものを書いて、このまま死んでもいいと思うようなところまでは、まだ行き着いてないですよ。
南:ですよね。だから真理子さんも、こんなに頑張ってるんですよね。
林:いつかそういうところに到達したいなと思う。全部出し切ってすごいものを書いて、このまま死んでもいいと思うようなところまで。私たち創作者はそれを求めてさまよってるんじゃないですか。
南:そうですよね。それが永遠に続く。
林:だからつらいんですよ。
南:その情熱が素晴らしいなと思う。「もういいや」と思わないで、「もっともっと。絶対この先に見えるはず」って。
林:「オーバー・ザ・レインボー」ですよ。
南:そうですね。私もいろんなことがあって、それもこれもあれも自分の胸で直接受け止めて感じ取って、胸の奥底にしまってるものがいっぱいあるんですよ。はたから見たら不幸な出来事がいっぱいあったように思うかもしれないけど、ほかの人には経験できなかったことを経験させてもらったんだと思える日が来るといいなと思ってるんです。