「罪状は」と聞かれ、「わいせつ物陳列罪」と久しぶりに声に出して言った。胸がぎゅん、と痛くなった。「あなたの言うことが本当なら」という慎重で威圧的な物言いに、後頭部が重くなった。まだ私は、逮捕で味わった苦痛を克服していないのだと気がつかされた。

 腰を縄でつながれ、動物のようにせき立てられる留置場で出会った女性たちの顔を、今も忘れられない。多くが不法滞在の外国人だった。日本語もわからないなかで、大声で喚かれ、狭い部屋に閉じ込められ過呼吸になる外国人女性もいた。背中をさすろうとしたら、「触るな」と怒鳴られた。そのような暴力が、今日も、日常のように行われているのだろう。

 他人の事件に巻き込まれるように逮捕され、意味不明の暴力を国家から味わった。その暴力を、一方的に「恩赦しますよ」と言われても、ちっとも嬉しくないことにも気がついた。私にとっては理不尽を理不尽で消すような力だ。ちなみに、アメリカは恩赦とは無関係らしい(大使館情報)。なんだよ。

週刊朝日  2019年11月8日号

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