北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は恩赦について。

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 天皇即位に際して55万人が恩赦になった。罪種に関わらず罰金刑を受け、その後3年間、禁錮以上の刑を受けていない者が、その対象だ。

 ふと気になって、法務省に電話をしてみた。たぶん、私は恩赦の対象だ。

 55万人もが恩赦になるというのだから、今頃法務省には問い合わせが殺到しているのではないかと思いきや、案外すんなりと電話はつながった。聞きたいのは、私が対象かどうかという確認。そして海外渡航制限が解かれるのかということ。

 逮捕後、私が一番困ったのは海外への渡航制限だった。アメリカとオーストラリアに気軽に行けなくなった。事件の詳細や裁判の公的記録を英訳し、大使館に提出し審査してもらわなければビザが発行されないのだ。アメリカなんて、そこまでして行きたい国じゃないし、と思おうとはしているけれど、「行けない国がある」現実は、自分の根の部分を削がれているような、不自由を突きつけられる。もし、渡航制限が解かれたら、本当はやっぱりすぐにでもニューヨークやボストンを旅したい。とても行きたい。

 結論を言えば、「対象かどうかは検察庁に電話して。アメリカに行けるかどうかは外務省に電話して」という答えだった。はあ。電話を切ってすぐに外務省に電話すると、恩赦? はぁ? 渡航制限? はぁ?という調子で「アメリカ大使館に電話してくれ」と言われた。担当の方も何も知らないようだった。絵に描いたような縦割りだ。

 それから東京地検に電話をした。恩赦の件で、というとすぐに取り次いでくれた。若い声できびきびと話す女性が、「私がこれから質問することに答えてください」という尋問調で「住所、名前、生年月日、罪状は、いつ罰金を支払ったのか、それは完済しているのか、どこで支払ったのか」と質問してきて、全て答え終わると「あなたが今言ったことが全て本当ならば、あなたは今回の恩赦の対象になっている可能性が高いです」とのことだった。

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