19歳の西田有志(C)朝日新聞社
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 ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本が史上初の8強入りを果たし、10月もラグビー熱の高まりが止まらない。そんな中、負けじとW杯で快進撃を見せたのが、バレーボールの日本男子だ。

 出場12チームの総当たり戦で、日本(世界ランク11位)は初戦のイタリア(同3位)戦でストレート勝ちし、ロシア(同5位)もセットカウント3-1で圧倒。ブラジル、ポーランド、米国に続いて計8勝(3敗)を挙げ、24年ぶりの4位を勝ち取った。平均視聴率でも、11日にフルセットで競り勝ったエジプト戦が11・5%(世帯視聴率、関東地区、ビデオリサーチホームページより引用)、イタリア戦が10・8%(同)などと健闘した。

 大会を取材したフリーライターの田中夕子さんは、こう話す。

「見ていて楽しかった。絶対勝てないだろうという相手にも、ひょっとするのではというわくわく感があった。結果も伴って、選手やチームにとって自信になったと思う」

 今大会、チームの大きな勝因となったのがサーブだ。これまでの代表戦では、他国の強烈なサーブに苦戦する印象が強かったが、田中さんによると、日本のサーブの質も他国にひけをとらないところまで上がってきているという。

「サーブで直接点が取れる選手が多かった。速さや強さで、相手にサーブ一発でやられていたのが、逆に日本にそのシチュエーションが増えたと思う」

 特に際立っていたのが19歳の新星サウスポー、西田有志(ジェイテクト)だ。カナダ(同6位)とフルセットにもつれた15日の最終戦では、第5セット9-9から6本のサーブを放ち、5本のサービスエースを決めて勝ち星をもぎ取り、観衆の度肝を抜いた。サーブランキングでも大会ダントツの1位だ。

「今まで日本人選手がサーブで1位になったことはないと思う。サーブは彼の武器ですが、すごいです」(田中さん)

 田中さんはもう一つの勝因として、前衛で主にブロックの役割を担うミドルブロッカーの成長を挙げる。スパイクの打数が少ない、ブロックの効果がないなど、長年このポジションは日本の課題とされてきた。だが、今大会では打数も増えて、ブロックでも存在感を発揮していたという。

「小野寺太志選手(JT)ら個々の能力が高かったことに加えて、攻撃時にセッターの関田誠大選手(堺)がミドルの選手をうまく使っていたのも大きいです」(同)

 今までと違う代表チームを牽引したのが、大エース・石川祐希(パドパ)。これまではけがなどで大きな大会をフルで戦いきれたことがなかった。今回、その壁を乗り越えた。

「昨シーズンからプロになって、体に対する意識が全然変わった。トレーニングや食事など、積み重ねてきた成果が出ている。なおかつコート内で活発に周りとコミュニケーションをとり、うまくチームを引き揚げていました」(同)

 新星、成長株、大エースと、注目選手があふれる男子バレー。五輪でのメダルは、1972年ミュンヘン五輪の金メダルが最後。来年の東京五輪では48年ぶりのメダル獲得に向けて、期待は高まるばかりだ。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事

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