「ハニャコちゃんの年金が十四、五万としてやね、おれと合わせたら二十万にはなるやろ。そこで提案なんやけど、二十万を分け分けして、十万円ずつをおたがいの小遣いにするのはどうかと思うんやけど、いかがですか」
「ピヨコちゃん、寝ぼけてる?」
「いえ、起きてますけど」
眼を指で開いてみせる。
「そんなにお金が欲しいんやったら、麻雀で勝てば」
「その麻雀が、あなたはお強い」
そう、よめはんとは毎日、二人打ちのサンマーをしている。よめはんは女流のプロ雀士よりも確実に強い。
「ピヨコはピヨコ、わたしはわたし。男のくせに年金がどうのこうのと細かいこといわんのやで」
「お言葉ですが、生まれてこのかた、男らしくありたいと思たことないんです」
「でも、ついてるよ、チ○チ○」
「なんべんもお見せしました」
話が逸(そ)れていく。わたしは諦めて台所へ行き、コーヒーを淹(い)れてよめはんに供した。
後日、テニス仲間のおじさんたち十人ほど(平均年齢七十すぎ)に手取りの年金額を訊いた。
定年まで働いた高校教師が二十万円台前半、元大手銀行員と広告代理店と商事会社員が二十万円台後半、あとはすべて十数万円から二十万円までで、わたしの六万円はぶっちぎりの少額だった。
※週刊朝日 2019年10月25日号