トランプ政権のアメリカでは、真実が見えにくく、言葉は軽く、性差別、人種差別が激化している。それでも、こういうドラマが作られるだけ羨ましく思う。今年一番話題になったドラマは、今のところ日本では80年代AVを描いた「全裸監督」だろう。「チェルノブイリ」も「全裸監督」も、どちらも80年代を実在の人物を通して描いたものだが、この違いは大きいのではないか。

 私は「全裸監督」の大ヒットに正直、困惑している。近年、AV産業に被害者がいる現実が明らかになりつつあるというのに、AV産業側の「思い」をエンタメに仕立てた作品が大ヒットする現実は、女性の声を軽く見積もる、なかなかに日本的な現実だ。そもそも正義や真実を追求する価値などなく、あるのは人それぞれの正義であり様々な真実という、そんな価値相対こそが絶対正義と信じていればこそ楽しめる物語だろう。

 福島第一原発事故を経た日本で「チェルノブイリ」が作られる日はくるのか。諦めた真実の数だけ、適当で刺激的な物語で妥協する習慣、もうやめたい。

週刊朝日  2019年10月18日号

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