“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、不振が続く地銀を追い詰める原因を解説する。
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落選したので、「参議院議員」の名刺が使えなくなった。そこで政界入り前の名刺を配っていたら、ある方から他のアドレス経由で「名刺のアドレスではメールが届きませんよ」との連絡が来た。アッ、またやってしまった。アドレスを間違えて印刷してしまったのだ。名刺を間違えるなんて、やはり私は政治家稼業に向いていない。そういえばJPモルガンの日本代表兼東京支店長のときも「Blanch manager」という名刺を配って外国人の部下に注意されたことがある。これだと「青白きマネジャー」になってしまう。正しくは「Branch Manager」だった。指摘以降、この名刺は、相場で大負けして顔が真っ青になったときだけしか使わなかった。
NHKで、地方銀行が生き残りをかけていろいろな努力をしているとのニュースをやっていた。地銀の経営者は、今まさに「青白きマネジャー」の心境だろう。今のままでは生き残りは難しいと思う。政府・日銀が、「異次元緩和」で足を引っ張っているからだ。
日銀は、私が金融マンのころにはやっていなかった長期国債の“爆買い”を2013年から始めた。1980年代後半の米国では、「S&L(貯蓄型金融機関)危機」から脱却するためにFRB(米連邦準備制度理事会)は長短金利差を拡大させたが、それと正反対のオペレーションだ。
爆買いすれば国債の値段は上がる(長期金利は下がる)ため、銀行が貸し出し利ざやでもうけるための「長短金利差」が大幅に縮小してしまった。最大の運用先だった長期国債の金利は急低下し、必要経費を超える利益を上げることは難しい。手持ちの株や債券を売って利益を上乗せしているのだろうが、これは本業の利益ではない。
貴重な資産を売却してしまったら、その後はどうやって食いつなぐのか。国債の利回りはマイナス圏だから、満期まで保有すれば損が出てしまう。メガバンクのようにディーリングでもうける人材や、海外で稼ぐだけのノウハウも地銀にはないだろう。