ライヴ/ジェリ・アレン&タイムライン
ライヴ/ジェリ・アレン&タイムライン
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今、“来てる”ピアニストのトリオ+タップ・ダンサーの初アルバム
Live / Geri Allen & Timeline

 早くも届いたジェリ・アレンの新作だ。前作『フライング・トゥワード・ザ・サウンド』がリリースされたのが今年の3月。同作はリン・アリエールやライアン・コーハンの秀作を生んだMotema Musicからの移籍作で、85年の『ホームグロウン』以来のピアノ独奏作である。

 コンセプトの異なるアルバムが矢継ぎ早に登場した背景には、契約した同レーベルが改めてアレンの売り出しに乗り出したということなのだろう。

 メジャー系のTelarc(上原ひろみも在籍)でデイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットら著名ミュージシャン参加の2枚を制作した後の移籍という事実を踏まえると、これはアーティストとレーベルの双方にとって幸福なマリアージュだと思える。

 本作はトリオ+タップ・ダンサー(クレジットは「タップ・パーカッション」、以下タップ)によるアレンのグループ“タイムライン”の、初めてのアルバムだ。

 実はアレンとタップとの歴史は意外に長い。86年のリーダー第3弾『オープン・オン・オール・サイズ・イン・ザ・ミドル』は電気鍵盤を導入し、スティーヴ・コールマンを含むオクテットで斬新な音世界を展開したアレンの初期重要作であり、ここにタップが加わっていた。以降アルバム上でアレンとタップが絡むことはなかったのだが、2004年にインタヴューした時に、「そのプロジェクトは継続していて、時々ヨーロッパでライヴを行っている」と聞き、活動の柱であると認識したのだった。

 日本ではほとんど知られていなかったタイムライン、ぼくは昨年5月にノルウェー、ベルゲンで開催された「Nattjazz」で観ている。単にトリオにダンスをフィーチャーしただけではなく、タップの視覚的な効果を狙いながら、パーカッション奏者としての役割を兼ねて、バンド・サウンドを躍動させた。個人的には1年前の追体験をしながら、本作を楽しんだ次第。

 曲名が興味深い15分超の#1は、10分過ぎに訪れるクライマックスのピアノ・ソロにタップが加わり、ドラムス&タップの掛け合いからデュオへと発展。マイルス・デイヴィスが50年代に採用して有名になった#6は、ドラムス&タップでスタートするアイデアが秀逸だ。歴史のあるジャズとタップの関係にあって、現在では少数派であるこのジャンルをアレンがこだわって継続している営為が、本作でクローズアップされよう。前作で再表明したマッコイ・タイナーとハービー・ハンコックに由来する自己のルーツを、入魂のピアノ・プレイで昇華させたピアニスト=アレンの凄みが体感できるのも収穫。

 今、ジェリ・アレンは“来てる”。

【収録曲一覧】
1. Philly Joe
2. Four By Five
3. The Western Wall/Soul Eyes
4. LWB’s House
5. Embraceable You/Loverman
6. Ah Leu Cha
7. In Appreciation

ジェリ・アレン:Geri Allen(p) (allmusic.comへリンクします)
ケニー・デイヴィス:Kenny Davis(b)
カッサ・オーヴァーオール:Kassa Overall(ds)
モーリス・チェスナット:Maurice Chestnut(tap per)

2009年2月、米オバーリン、ポートランドで実況録音

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