

高校野球では、グラウンドで躍動する選手に加えて、試合中に様々な役割を担うサポートメンバーがいる。記録員、走塁コーチ、ブルペン捕手……。守備のタイムで出る「伝令」も、その一つ。8日の第101回全国選手権大会第3日で伝令を務めた選手たちは、何を心に留めていたのか。
甲子園常連校の明徳義塾(高知)に挑んだ藤蔭(大分)。六回表1死二塁から、三塁手・朝倉康平(3年)の失策で点差が3点に広がったところで、ベンチから大原幸大(3年)が飛び出した。
「アウトを1個ずつ(とろう)。(二塁走者は足が速いから)そこは警戒するけど、まずはバッター集中」
竹下大雅監督の指示を伝えた。朝倉が気落ちしていないか気になったが、「リラックスできていたので、大丈夫かなと思った」。
昨秋の公式戦からずっと伝令を任されてきた。守備のときは、いつでも伝令に出られるように監督の近くで戦況を見つめる。
本来は内野手。だが、試合では進んで裏方の仕事を引き受けた。この日も途中出場した選手から、攻撃時にバットや打者のガードを回収する役目を引き継いだ。
「藤蔭の内野守備は堅くて、(先発メンバーが)けがでもしない限り(出場機会がない)。自分は何でも動いて、野球(のプレー)以外で貢献できるかなと思った」
試合は点差を6点に広げられた直後の六回裏に4点を奪って食らいついたが、一歩及ばなかった。
「自分たちの野球はできたと思う。出塁して、足を使って……。(得点した)4点はいつものペースだった。勝ちたかったです」
前橋育英(群馬)は六回表、右前への適時打で国学院久我山(西東京)に1点差に詰め寄られ、なおも無死二塁。市川貴大(3年)が伝令に走った。
少し暗く見えた選手たちに対し、「まだだよ、全然大丈夫だよ」と声をかけた。
「ここをしのげれば、自分たちに流れが来る」
荒井直樹監督のメッセージをそう伝えた。チームはそこから後続を断った。