

ジャーナリストの田原総一朗氏は、今回の参院選について投票率の異常な低さについて、自身の考えを明らかにする。
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参議院選挙の結果で、私が最も衝撃を受けたのは、48.8%という投票率の低さであった。前回よりも約6ポイント低く、有権者の半分以上が投票をしていないのである。
いくつかのテレビ番組で、出演した学者や政治評論家たちが、国民の多くが政治に関心を持っていないと嘆き、批判的に述べていた。
そうした指摘が誤りだとは思わないが、私は、自民党も野党も国民が強い不安を感じている問題から逃げていて、自分たちに都合のいい事柄ばかり論じていたので投票率が異常に低くなったのではないか、と捉えている。
たとえば、安倍首相はしきりに憲法改正の必要性を強調したが、共同通信が22、23日に実施した「安倍内閣が優先して取り組むべき課題」についての世論調査で圧倒的に多いのは「今後の生活不安」「介護・医療」「これからの景気」などであって、「憲法改正」は最下位の9位、6.9%でしかなかった。
現在、日本の経済専門家で10年後の日本の確たる展望を示せる人物は一人もいない。
参院選で野党は、いずれも消費税の2%増税に強く反対したが、実は民主党政権の3代目の首相、野田佳彦は、消費税10%を打ち上げている。それを今になって、立憲民主党、そして国民民主党も2%増税に反対するのは矛盾ではないのか。
また、年金問題では老後に2千万円足りなくなるということで、野党が自民党を攻撃しているが、2千万円という金額を問題にすること自体が無責任極まりないのである。
金融庁の報告書には、確かに65歳の男性と60歳の女性の夫婦が、あと30年以上生きると2千万円が必要だと示している。だが、総務省が9千世帯を対象に調査した今回のケースで、この夫婦は月に約21万円の収入があり、しかも貯金が約2500万円あることになっている。つまり、ほとんどが厚生年金に加入している、いわば恵まれているケースなのだ。現在、企業で働く従業員の約4割は非正規社員で、彼らの多くは国民年金にしか加入していない。非正規社員には、企業が年金の掛け金の半額を負担しないからである。