菊池さんが用意したのは、バギーパンツと体のラインに沿ったダブルのジャケット。ドラマのエンドロールにBIGIのロゴが入り、名前は瞬く間に広まった。日本のメンズとして初めてパリに進出、DCブームの火付け役となるが、きっかけは「傷天」だった。
自分には威勢の良さだけだ、引き出しが足りないとショーケンは次に倉本聰さんを訪ねている。それが『前略おふくろ様』。板前見習い、山形生まれの青年が「前略おふくろ様」と手紙を読む。このモノローグが話題になった。
学生運動後の虚無感を描く『青春の蹉跌』では監督・神代辰巳と組んでキネマ旬報主演男優賞を、黒澤明の『影武者』に出演すると、作品はカンヌ映画祭パルムドールを取った。
演者萩原健一の華やかな開花である。結婚と離婚を繰り返し、大麻所持や恐喝未遂容疑で逮捕など私生活が荒れた時期もあった。しかし、その都度返り咲いた。彼の演技に、「何をしでかすかわからない。毎回考えてきて、違う演技をする。そんな若者は彼ぐらいだ」と三國連太郎は唸った。
きぬちゃん食堂の最終日は雨だった。レジには、萩原の遺影が飾られていた。翌日には何もかも撤収という話に、この写真はどこに行くのだろうと気になった。
NHK大河『いだてん』で高橋是清を演じるショーケンを見たのはその3日後。物言わぬアップのショットが永遠に思えた。
※週刊朝日 2019年8月2日号