京都アニメーション第1スタジオに備えられた花(C)朝日新聞社
京都アニメーション第1スタジオに備えられた花(C)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る
安否不明の木上益治監督を心配して駆けつけた同級生が手にしていた若い時の写真。左から二番目が木上監督
安否不明の木上益治監督を心配して駆けつけた同級生が手にしていた若い時の写真。左から二番目が木上監督

 34人が死亡、34人が重軽傷を負った放火事件の舞台となった京都市伏見区の「京都アニメーション」(以下は京アニ)には、業界では有名なアニメ制作者たちが在籍しているが、現在でも安否が不明な大勢がいる。

【安否不明の木上益治監督を心配して駆けつけた同級生が手にしていた若い時の写真】

 取締役の木上益治監督と40年近く前、東京のアニメの専門学校で同級生だったという渥美敏彦さん(59)は、静岡から京都に来た。

「木上さんは2歳年上で、優しい兄のような存在でした。静岡の家に時おり立ち寄ってくれて、遊んだものです。木上さんはアニメの世界で有名になり、本当に忙しくなったけど、京アニで偉くなられてうれしかった。世話好きで、若い子を育てなきゃと話していました。とにかく無事でいてほしい」

 同社制作の「ツルネ─風舞高校弓道部─」で、共に作画監督を務めた西屋太志さんと池田和美さん。作品は去年10月から今年1月までNHKで放送された。

「ツルネは局内でも評価の高いアニメだった。西屋さんは第9話を、池田和美さんは5話以降をほぼ担当してくれていた。コミュニティー内の緩い空気感と、いずれ外の世界に出なければいけないという予感が絡み合う、青春期のリアリティーを見事にアニメ化していた」(NHK関係者)

 ここまで被害が拡大した原因は何だろうか。

 元消防官で防災ナビゲーターの永山政広氏が指摘する。

「ガソリンは2リットルでも建物1棟分を焼失できるほどの威力がある。現時点での情報から推測すると、建物は十分な耐火性を持っていたと考えられる。建物内のらせん階段を通じて1階から2階、3階へと炎が広がりやすい構造だったとは言えるが、(大量のガソリンで)通常の想定を超えた火災が起きてしまった」

 多くの人が机を並べて作業する、アニメ制作の現場の事情もありそうだ。

 京アニとも関係があるアニメ会社の20代のクリエーターは、今回の事件に恐怖を感じた。

「自分たちも机を並べて京アニと同じような環境で働いています。もしも同じように放火されたとき、生きて逃げられるのか。今回のように悪意を持って火をつけられたら、防ぎようはないと思います」

次のページ
防犯カメラを増やしていた京アニ