34人が死亡、34人が重軽傷を負った京都市伏見区の「京都アニメーション」(以下は京アニ)放火殺人事件。京都府警捜査本部が逮捕状を取った職業不詳、青葉真司容疑者(41)は、やけどの症状が重いことから、大阪府の病院に転院し、治療が続いている。
一方、被害にあった人たちの名前はまだ、警察から発表されていない。捜査関係者は理由をこう説明する。
「ご遺体のすべてを解剖することとなったこと、損傷が激しく身元の特定に時間がかかっている」
京アニの社員である娘、が安否不明になっている父の伸一さん(69)はハンカチで目頭を押さえ、こう訴えた。
「犯人の青葉なんて、どうでもええ。早く、娘を返してほしい」
伸一さんが火事の報に触れたのは、7月18日昼頃だった。
「知人からの電話があり、テレビニュースで火事を知った。最初、京アニというから本社の方で、娘は京阪・六地蔵駅近くの第1スタジオなので大丈夫だと思った。それが、スタジオだと聞き、目の前が真っ暗になった。京アニの本社に電話すると連絡がつかないという。大阪に住む、幸恵の妹が京都の現場に駆け付けたが、何もわからず、連絡がとれないというばかり。私も何度も、幸恵の携帯電話をダイヤルしましたが、つながりませんでした」
その後、京都府警から連絡があり、事件の翌日に警察に出向くと、「DNAを採取させてください」と言われた。
「覚悟はしていたのですが…。とにかく、一日でも早く幸恵を戻してほしいと願うだけです」
幸恵さんは小学校のころから絵を描くのが好きで、高校卒業後にアニメの専門学校に進み、その後。京アニの正社員になり、働くようになった。伸一さんがこう語る。
「子供のころから絵はとてもうまかった。アニメのるろうに剣心が大好きで、高校時代は家に帰ったら、すぐに机に向って、描いていた」
幸恵さんは京アニに入った後、色をつける仕上げや特殊効果の工程をずっと担当していた。京アニの代表作「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」など多くの有名作品も手掛けていた。放火されたスタジオの2階が職場だったという。
「よく仕事の裏話とか聞かせてくれましたよ。幸恵は子供の時からぜんそくの持病があって、家に閉じこもりがちの時代もあった。だが、京アニに入って、アニメの仕事は天職だったようで、いつも生き生きと、表情も明るくなりました」(伸一さん)