

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「もみ消して冬2019夏~夏でも寒くて死にそうです~」(日本テレビ系 6月29日21:00~)をウォッチした。
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家族の不祥事を何かともみ消すハメになる東大卒の警察官・北沢秀作(山田涼介)を、コミカルに描いた連ドラ(2018年1月期)がSP版で帰ってきた。
父(中村梅雀)は私立中学の学園長(のちに解任)、兄(小澤征悦)は天才外科医、姉(波瑠)は敏腕弁護士というエリート一家。
ほぼ全編、秀作の全力変顔に身もだえ熱演、そこに「火曜サスペンス劇場」のBGMを「ジャ、ジャ、ジャーン!」と、大安売りで鳴らしまくる。
笑ってちょうだいって演出なのでサラッと見られるけど、よく考えたらコレ、けっこうブラックな話。
だって連ドラの終盤、父親の密会写真をもみ消すために、探偵事務所に忍び込んだ秀作は、逮捕→半年間勾留→現在無職。
でも、すべては父親のため、家族のためだから、って言われれば、そうですかとも思うけど、実は秀作は、生まれた時に病院で取り違えられていたことが発覚。
ジャ、ジャ、ジャーン! 赤の他人じゃーん! 家族関係ないじゃーん! それでも相変わらず北沢家で暮らし、トラブルもみ消しに奔走する秀作。この状況こそがサスペンス?
秀作の事件を題材にした本が、大ベストセラーになった父親。第2弾のタイトルは「教育失敗」だ。
その内容は、「息子は万引き常習犯で、手におえないモンスター」という捏造本。発売前にバレそうな嘘。
もみ消すためには、嘘を真実にするしかない。父親のため、金髪に染め「モンスター」となって出版イベントに乗り込む秀作。お前は「泣いた赤鬼」か。
そんな茶番劇で誤魔化しても、やはり嘘はもみ消せない。不都合はもみ消したいけど、もみ消せない。
そう、例えば先日の「アメトーーク!」(テレビ朝日系)。闇営業問題で謹慎処分を受けたMC・雨上がり決死隊の宮迫博之の出演シーンが、ばっさりカットされていたのだ。
不自然に横が切られた、相方・蛍原徹のワンショット。引きの絵が出せないから、妙に圧迫感のある寄り映像と分割カットの応酬。
画面に宮迫は一切いないのに、なぜかひしひしと感じる宮迫の影。不在という存在感が浮き彫りになる。隠そうとすればするほど、目立つ真実。
秀作が変顔で、身をもって教えてくれる。もみ消せないよ、闇(営業)。
※週刊朝日 2019年7月19日号