そのうえで、高田氏は「今すぐ健康影響が出るということではないが、魚が食べるプラスチック量が増え続ければ、環境中の生物に障害が起きても不思議ではない」と述べる。

 一方、欧州食品安全機関は「MPそのものが人体へ影響を及ぼすことは考えにくい」と主張する。魚が内臓に取り込んでいても、人間が食べる際には取り除くことが多いためだ。

 だが、高田氏と同じく、プラスチック表面に付着する有害化学物質については、「研究やデータがもっと必要」と慎重な姿勢を見せる。

 今のところはっきりした影響はわからないが、環境中のMPを取り除くことが困難なことを考えれば、求められる対応はこれ以上の拡散を防ぐこと。このため、削減に向けた政策的な動きも進む。

 政府は18年6月に海岸漂着物処理推進法を改正。「マイクロプラスチック」の文言を新たに条文に盛り込み、事業者に使用や排出の抑制の努力義務を課すなどの対策を打ち出した。

 さらに日本が議長国として6月に大阪で開かれるG20では、海洋プラスチック対策を提案することが決まった。

 環境省の幹部の一人はこう語る。

「昨年6月のG7シャルルボワ・サミット(カナダ)で日本は海洋プラスチック憲章への署名を拒否し、批判を浴びました。産業界や関係省庁との調整が間に合わなかったことが理由ですが、このときの汚名返上を果たすためにも今回は世界のリーダーシップを取る必要があります」

 現在、環境省では「プラスチック資源循環戦略」を策定中。30年までの使い捨てプラスチック排出量25%減や、35年までのプラごみ100%有効利用を掲げる予定だ。

 このままいけば、50年に海のプラごみが魚の量を超えるとの試算もある。

 そうなれば、ヒトの健康や生態系に大きな影響を与えるだろう。手遅れにしないためにも早急な対策が必要だ。

週刊朝日  2019年6月28日号

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