1日に11時間以上も働くサラリーマンは発症リスクが基準グループ(7時間以上9時間未満)と比べて2.11倍も高かった。国立がん研究センターなどが40~59歳の男性1万5千人を対象に20年にわたり追跡したものだ。

 今回の調査では、追跡を開始した年齢が40代だった人は急性心筋梗塞の発症リスクとの関連がみられなかったものの、50代だった人は基準グループに比べ2.60倍も発症リスクが高かった。この結果について、調査の責任者を務めた大阪大学の磯博康教授(公衆衛生学)は次のように分析する。

「50代の人は40代だったときにも長時間働いていたと考えられ、長期間にわたって動脈硬化が進展していったからでは。長時間労働の“蓄積効果”があったとみられます」

 つまり、長時間労働の影響が蓄積して動脈硬化が無自覚のまま進み、定年を迎えた後に、急性心筋梗塞の発症につながる可能性があるようだ。

 しかも、労働時間だけが問題になるわけではない。働き方も関係してくるという。1日に11時間以上も働いている会社員などの「勤務者」は発症リスクが基準グループと比べて2.11倍も高かったのに対して、自由業に従事するなどの「勤務者以外」では関連がみられなかった。

 磯教授は、会社員などの勤務者は与えられた仕事に従事し、労働の裁量の幅が狭いと指摘し、これが「過労やストレスにつながる」とみている。適度に息抜きをするなど自己管理がうまい人もいるが、そうできない人は過度のストレスが続く場合がある。

「長時間労働が急性心筋梗塞の発症リスクを高めるのは、睡眠時間が短くなり、疲労回復が不十分になりがちなほか、精神的なストレスが増大する傾向があるためです」(磯教授)

 今回の調査は1日の労働時間が7時間未満、7時間以上9時間未満(基準)、9時間以上11時間未満、11時間以上の4グループに分類。11時間以上の急性心筋梗塞の発症リスクは基準グループの1.63倍だった。

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