元経済産業省の改革派官僚・古賀茂明さんの連載「政官財の罪と罰」。今回のテーマは安倍総理とトランプ大統領との本当の関係とは?。
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日米通商交渉が進んでいるが、私は今年7月の参議院選挙終了までは、大きな結果は出ないと昨年の交渉スタート時点から予測してきた。閣僚級以下はともかく、安倍・トランプの決定的対立の場面はあり得ない。なぜなら、両者の間には“選挙互助会”があるからだ。
新貿易協定の交渉入りに合意した日米首脳会談は、2018年9月末。11月には米中間選挙が控えていた。支持者にアピールできる材料を欲しがるトランプ大統領に、安倍総理は、事実上のFTA交渉入りを容認した。
国内向けには、これは「物品貿易協定(TAG)」に過ぎず、「FTA(自由貿易協定)」のように日本に厳しいものではないという大嘘をついてまで、大きな貢ぎ物を差し出したのだ。ペンス副大統領は、その直後に「日米でFTA交渉開始!」とメディアに宣伝した。
これは米側にとって大きな成果だった。
さらにこの首脳会談で安倍総理は、(1)農産品の関税をTPP水準並みに下げると交渉前から譲歩し、(2)米自動車産業の雇用と生産を増やすことに協力すると事実上約束した。(1)はアメリカの農業従事者、(2)は自動車産業関係者にアピールできる。至れり尽くせりだ。交渉開始前にもかかわらずトランプ大統領が「日本からの成果」を誇示し、共和党への投票を求めたのは言うまでもない。これが安倍・トランプ選挙互助会の第1幕だ。
第2幕はトランプ大統領から安倍総理へのお返しだ。ただし、形だけで中身はない。なぜなら二人の間は安倍総理が一方的に隷属する関係だからだ。日本では今年7月に参院選がある。その前に日米交渉で日本大敗の結論が出ると選挙で自民党が敗北し、安倍降ろしにつながりかねない。それはトランプ大統領にとってもマイナス。安倍総理ほど自分に追従して、武器も言い値で爆買いしてくれる外国首脳はいないからだ。