いつも誰かと一緒にいようとしたり、周りに合わせたり。そんなに孤独は怖いこと? 毅然として「個」として生きる覚悟を決めれば、そこから広がる世界もある。そんな孤独との付き合い方を『極上の孤独』著者の下重暁子さんに聞いた。
下重暁子さんは痛快な人だ。このインタビューの場にもスルッと一人で現れた。
「スケジュール管理? もちろん全部自分でやっています。原稿を書く時間はいつも午後1時から午後7時くらい。途中でお茶を飲んだり、お菓子を食べたりもしますけれど、1日4千字くらいは書いちゃいますね。書き出すまでは大変ですけれど、書き出したら私、速いんですよ」
近年ヒット作を連発。著書『極上の孤独』はいまだに話題だ。孤独というと一般的にはあまりいいイメージの言葉ではない。しかし下重さんにとって孤独とは「『一人で生きていく覚悟』です。年をとると一人でいることを嫌う人も多いけれど、無理して団体行動をとり続ける必要はありません。私自身、覚悟を持ってできるだけ自由に生きていきたいと思っています。人生の終わりが近づくにつれてできるだけ自由になって、すべてを脱ぎ捨てて死んでいきたいのです」。
孤独とは、しがらみのない自由。
「そして何ものにも縛られない自由です」
その自由のために不可欠なのは、経済的な自立と精神的な自立だ。
「最低限、自分一人は養っていく『経済的な自立』と何事も自分一人で考えて決める『精神的な自立』です。これがないと、本当の自由は獲得できません」
孤独を嫌う人というのは往々にして、この「精神的な自立」ができない。会社を定年退職したあとも何かしら組織に属していないと落ち着かなかったり、「定年後は自分の好きなことをやって生きていきたい」と心の中で思ってはいても、結局その一歩が踏み出せなかったり。
「長い間組織に属していると、『個人』で行動することが怖くなってしまうのでしょうね。でも『個人』で生きるのが怖いなんて言っていたら、長い人生を生き抜くことはできません。憲法13条でも個人の尊重は規定されているではないですか。もっと『個』を大切にする気持ちを持たなければ。いまは『個人』の“個”がとれてしまっている人があまりにも多いように思います。でも“個”の意見を持たないただの“人”というのは、“都合のいい人”として扱われるだけですよ」
肩書に執着するのも、みっともない。