「安倍政権の新元号パフォーマンスはやりすぎと思いますね。瞬間風速的に支持率が上がってますが、愚かな話だと思います」
調査では、新元号と西暦で「新元号を使いたい」は18・8%、「西暦を使いたい」は34・0%、「両方使いたい」は45・1%だった。この数字を冷静にみれば、新元号に歓迎ムードがあるとはいえ、すべてが安倍政権の思惑どおりに進んでいくとは限らない。その一例はイチローの国民栄誉賞辞退であり、“忖度発言”で塚田一郎国土交通副大臣が引責辞任したことだろう。自民党幹部はあきれる。
「忖度なんて言葉、使うかね? 森友学園、加計学園問題であれほどたたかれたのにさ。副大臣クラスがこんな発言をしていて、安倍首相も問題ないとしていたのは、さすがに緩んでいるとしか言いようがない。ある派閥では、統一地方選の応援の演説も気を付けるようにと指令が出ているよ」
実は「令和」と忖度は関連があるとか。本郷教授によると、「令」の字は、中国の孔子の言葉をまとめた「論語」や教科書にも出てくる言葉だという。
「『巧言令色鮮し仁』という有名な言葉があります。『巧言』というのは巧みな弁舌という意味。『令色』は作り笑い。つまり忖度の意味ですね。『鮮し仁』というのは仁(今の言葉で愛)には遠いという意味です。安倍首相はどうしてこの『令』を元号に取り入れたのか」
「万葉集」からの出典は初の国書からの典拠だとして、政府は得意げだが、皇室で和歌を教えてきた、岡野弘彦さんは指摘する。
「大和言葉を使った和歌ではなく、漢語的な表記で歌われた和歌です。あの時代、宮廷で仕える役人は、中国の漢文を使うのが普通ですから、これまでの元号と変わりはありません」
それを国書からと声高に叫ぶのは、いかがなものかと思ってしまうという。
「そもそも始まりの神武天皇から、元号は漢語がふさわしい。大和言葉で元号をつけようとすれば、間が抜けてしまう。提案した学者もそのあたりは承知の上でしょう。政治家にも、ぜひ理解してほしいですね」
改元に絡んだドタバタ劇を4月9日発売の週刊朝日で詳報している。
(本誌・上田耕司、永井貴子/今西憲之)
週刊朝日2019年4月19日号より抜粋