

難聴の原因はいくつかあるが、加齢による難聴(加齢性難聴)には治療法がなく、補聴器で聞こえを補うことがすすめられる。補聴器装用を考えるときに知っておきたい、補聴器の選び方や購入時の注意点などを聞いた。
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加齢に伴う聴力の低下は誰にでも起こるが、程度は個人差が大きい。加齢性難聴のリスク要因について、北里大学医療衛生学部教授の佐野肇医師はこう話す。
「糖尿病や動脈硬化など、血管の障害が関係する病気の人は難聴が早く進む傾向があるようです。ほかにストレスや遺伝的要因が関係するという説もあります」
加齢性難聴の多くは両耳に起こり、高い音から聞こえにくくなる傾向がある。防衛医科大学校病院耳鼻咽喉科の水足邦雄医師は、その特徴についてこう話す。
「高齢者の聞こえ方として、小さな音が聞こえにくくなることに加え、音の聞き分けが悪くなることがあります。そのため、聞こえてはいるけど言葉がはっきりせず、会話が聞き取りにくくなるのです」
難聴は、聞こえの程度により軽度、中等度、高度、重度に分類され、一般的には中等度難聴(40デジベル以上)になると補聴器の装用をすすめられる。しかし、聞こえ方や不便の感じ方は人によって異なる。加齢性難聴は徐々に進行するため、気づきにくい特徴もある。
「家族が困って受診をすすめても本人は困っていないこともあります。ただ、実は、困っていることを自覚していないだけのこともあり、補聴器をつけて、聞こえていなかったことを自覚する人もいます」(水足医師)
補聴器について、「眼鏡店などで購入するもの」と考える人も多いが、補聴器は法制度により定められた医療機器及び補装具で、購入前には耳鼻咽喉科を受診し、日本耳鼻咽喉科学会が認定する補聴器相談医の診察を受けることが望ましい。
「まずは、診察や聴力検査をして難聴かどうかの正確な診断をし、難聴である場合は原因や程度を調べることが必要です。原因によっては治療できる難聴もあるため、治療が可能か不可能かも判断した上で、補聴器の装用が有効と考えられる場合には試聴や購入の相談をします」(佐野医師)