大阪弁護士会は08年から遺言・相続センターを開設し、無料電話相談を実施している。相談を通して得た様々なノウハウを『遺言相続の落とし穴』という冊子にまとめた。
遺言能力と遺言の無効▽遺言書を書くタイミング▽生前贈与の問題点▽相続分を指定する遺言の危険性、など60のテーマを解説。一般に信頼性が高いと言われる公正証書遺言にも、落とし穴があることなどを紹介している。
冊子を監修した藤井伸介弁護士は、公正証書遺言の別の課題も指摘する。
「高齢富裕層の方を中心に、信託銀行から『遺言信託』のサービスで公正証書遺言作成を勧誘されることがあると思います。その場合、信託銀行が遺言執行者に指定され、相続開始後は信託銀行が遺言執行者として相続処理にあたります。ただ、もし相続人間に争いが起きれば、信託銀行は弁護士法との関係で紛争に介入できなくなるため、辞退せざるをえません。つまり、もう一度、弁護士に頼んで最初からやり直しになることだってあるのです」
遺言作成を巡っては様々な関係者がいる。弁護士、税理士、司法書士、行政書士、公証人、銀行員……。それぞれ少しずつ専門分野が違い、立ち位置も異なる。自らが相続で抱える悩みや問題が何かを整理し、「生兵法はけがのもと」とならないように適切な相談相手を探したい。(本誌・中川透)
※週刊朝日 2019年3月15日号