「やってみな……」と師匠。

「頂きま……ウンマーーイッ!!」

 クイ気味に叫んだのがかなりわざとらしかったが、ホントに美味い。いや、ちょっと半信半疑だったがこいつはスゴい。師匠は黙って満足そうにこちらを見つめるのみ。「わかればいいんだよ……」

 コーナーが終わると、担当者は「良かったらご自宅で」とノンフライヤー師匠に別れを告げた。師匠は「心得てるさ」とばかりに無言で箱に収まり、その日のうちに我が家の台所においで頂いた次第。「ノンフライヤー師匠だ、よろしくな」。家族に紹介。「あーこれ、便利なのよね!」と家内。便利とか気安く言うな! 大師匠だぞ。

 翌朝、遅く目覚めるとテーブルには唐揚げの山。みな師匠の作だという。長女が「うちのお父さんはスゴい!」「だろ? こんな便利なものをもらってくるんだから!」「なにいってんの?『うちのお父さん』だよ!!」。

 どうやら我が家ではノンフライヤーのことを『うちのお父さん』と呼ぶことに決めたらしい。「あなたあんまり家に居ないんだからちょうどいいわよ」と家内。それはなかなかいい『発明』かもしれないね。「ヌオーーン」と唸る新・お父さんが「俺に任せとけ」と言っている。元・お父さんは軽く泣きたくなったけど。チーン。

週刊朝日  2019年3月8日号

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