またその次に多い答えは、男性は「仕事で疲れている」、女性は「面倒くさい」だった。疲れているから、また今度。面倒くさいから、またにして。夫婦間では確かについつい、口にしてしまう言葉かもしれない。
「それでカップルの双方が『しなくていい』と納得しているのであればいいですよ。しかし片方は相手に真剣にアプローチしているのに、もう片方が疲れた、面倒くさいを繰り返していけば、2人の間にやはり確執は生まれてしまうでしょう」
そして溝は放置すれば放置するほど、深くなってしまう可能性がある。
「その亀裂を引きずったまま、その先も一緒に長い人生を歩んでいくのはちょっとつらいものがありますよね。夫婦関係というものは長い時間をかけて築き上げていくものです。もし高齢期に入る前から相手との間に性欲格差を感じることが多いのであれば、早めに“自分たちなりのセックスの形”を考えることが必要ではないでしょうか」と語るのは、恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美さんだ。“自分たちなりのセックスの形”とは?
「自分たちが定義するセックス、ということです。セックスに、こうしなければならないなどという決まりはありません。絶対に互いに服を脱いで、裸にならなくてはいけない。絶対に性器を挿入しなければならない。そんなことにとらわれる必要はないのです。服を脱がないなら、脱がなくてもいい。手をつないで、お互いの肌に触れて添い寝するだけでもいい。ただ男であること、女であることを意識したセクシュアルな行為であることは必須。そしてそれを継続していくことが大事なのです」
産婦人科医の宋美玄さんも言う。「夫婦関係をおざなりにしておきながら、高齢期に入って夫婦間の性生活を再開しようとしてもなかなか難しいでしょうね」
宋さんのクリニックでは、高齢者の悩みの相談は2パターンあるという。ひとつは高齢になっても性欲が強く、妻を含めそれを受け止めてくれる女性がいないという男性からの相談パターン。もうひとつは、夫が認知症になってから激しく求めてきて困るという女性からの相談パターンだ。