アトピー性皮膚炎の悪化や再発には、かくなどの掻破(そうは)行動が深く関わっている。かきたくなる原因はかゆみとストレスで、どちらも取り除くのは難しい。かかないようにするには、行動に働きかける行動療法が有効だ。
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仕事が忙しい、友人と仲たがいしたなどストレスが多い時期に、肌荒れやニキビに悩んだ経験はないだろうか。「皮膚は心の鏡」といわれるように、気持ちは皮膚の状態に大きく影響する。中等症以上のアトピー性皮膚炎で、治療をしても症状がなかなか改善されない人は、心理状態が影響していることが少なくない。
アトピー性皮膚炎の主症状は、かゆみのある湿疹だ。かゆいところがあれば、人は無意識にかく、たたく、こする、つねるなどして皮膚を刺激し、かゆみを解消しようとする。こうした行為をまとめて「掻破行動」というが、これが症状を悪化させる。
掻破行動の原因がかゆみだけなら、薬物療法で一定の効果は得られるし、冷やすのもよい。しかし、かゆみがなくても掻破行動は引き起こされる。その原因がストレスだ。成人患者では、仕事のちょっとしたトラブル、人間関係の軋轢、イライラ、焦りなどが多い。
アトピー性皮膚炎を悪化させる最大の因子が掻破行動だといわれる。実際、掻破による悪化に手を焼いている医師は少なくない。とくに原因がストレスの場合、どんな治療が有効なのか。
若松町こころとひふのクリニック院長で、アトピー性皮膚炎と皮膚心身医学を専門とする檜垣祐子医師はこう話す。
「ストレスが心理状態に影響し、症状が悪化しているとしても、いきなり心にアプローチするのは難しいです。心のなかは見えませんから。そこで、目に見える行動に着目します」
■掻破以外のストレス解消法を
ストレスがかかったときの物事のとらえ方を「認知」という。その際に心のフィルターを通るので、同じ物事でも人によってとらえ方は異なる。この認知の仕方によって、さまざまなストレス反応が表れる。これには、心理反応(不快な気分)、身体反応(好ましくない症状)、行動反応(好ましい行動または好ましくない行動)の三つがある。