大声であえぎ、痴態を演じる人を、言葉は悪いが、「淫乱女優」とも称した。思いつくままに名前を挙げると、豊丸、沙也加、朝吹麻耶、沖田ゆかり……。やらせと本気。ビデオカメラの前で彼女たちは境界線を何度も行き来したにちがいない。

 ビデオカメラが小型軽量化したうえ、連続録画時間の延長が可能になり、片手でビデオカメラを操作しながらベッドシーンを撮影することもできるようになったことも大きい。「ハメ撮り」という言葉を聞いたことがある読者もいるだろう。撮影スタッフを排除し、男と女が一対一で向き合う緊張感や親密感が画面から伝わってきた。これもまたドキュメンタリーの魅力である。

 そういえば、昭和57年に発表され、AVブームの起爆剤となった代々木忠監督の「ドキュメント ザ・オナニー」も忘れてはいけない。「さあ、もっといやらしくなってごらん」。代々木の低音の声に、次第に反応していく女性。この先は想像にお任せしよう。同じころに売り出された「洗濯屋ケンちゃん」も裏ビデオの屈指の名作。ビデオデッキの一般家庭への普及に貢献した作品としても語り継がれている。

 男優からもスターが生まれた。筆頭が「ゴールドフィンガー」の称号をほしいままにしたタレントの加藤鷹(59)だろう。そのテクニックは「究極奥義」とされたが、何よりも優しさに癒やされる女性が多かったという。体を重ねることは心を重ねること。性愛の世界に深い精神性を求めたAV界のレジェンドから学ぶべきことは多い。

週刊朝日  2018年12月7日号

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